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広島地方裁判所 昭和55年(わ)340号 判決 1980年10月09日

本店の所在地

広島市中区上八丁堀七番九号

法人の名称

日本臓器株式会社

代表者の氏名

松村義男こと朴憲正

代表者の住居

広島市中区白島九軒町五番六-六〇三号

国籍

朝鮮(慶尚南道固城郡九萬面広徳里)

住居

右代表者の住居に同じ

会社役員

松村義男こと朴憲正

一九三八年一二月一〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官吉川興治、弁護人藤本亘各出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

一、 被告法人日本臓器株式会社を罰金二〇〇万円に、被告人朴憲正を懲役一〇月および罰金四〇〇万円に処する。

二、 被告人朴憲正において右罰金を完納することができないときは、金一万五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

三、 被告人朴憲正に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

(罪となるべき事実)

被告法人日本臓器株式会社は、広島市中区上八丁堀七番九号に本店を置き、女性衛生用品及び女性下着類等の訪問販売及び卸売業を営むもの、被告人朴憲正は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人朴憲正は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一 昭和五一年六月一五日から同五二年五月三一日までの事業年度において、同会社の所得金額が一、八七一万五、七〇四円で、これに対する法人税額が六六四万六、〇〇〇円であるにもかかわらず、同会社のすべての取引や金銭の収支及び資産の状況を明確にしておく帳簿を備え付けず、また、架空の法人名義を使用して商品の販売を行い、更には架空の法人名義の振替貯金口座を設定してその割賦販売代金を取り立てるなどの方法により、その所得を秘匿したうえ、右法人税の申告期限である同五二年七月三一日までに、同区上八丁堀三番一九号所在の広島東税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もって、不正の行為により法人税六六四万六、〇〇〇円を免れ、

第二 昭和五二年六月一日から同五三年五月三一日までの事業年度において、その所得金額が四、六三七万六、六六一円で、これに対する法人税額が一、七七一万四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法及び仮名若しくは他人名義の定期預金等を設定するなどの方法により、その所得を秘匿したうえ、右法人税の申告期限である同五三年七月三一日までに右広島東税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もって、不正の行為により法人税一、七七一万四〇〇円を免れ、

第三 昭和五三年六月一日から同五四年五月三一日までの事業年度において、その所得金額が四、五〇一万六、五八七円で、これに対する法人税額が一、七一六万六、四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により、その所得を秘匿したうえ、右法人税の申告期限である同五四年七月三一日までに右広島東税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もって、不正の行為により法人税一、七一六万六、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一、 被告人の当公判廷における供述(判示冒頭の事実を含む)

一、 被告人の検察官(六通)及び司法査察員(謄本)に対する各供述調書(右同)

一、 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通(右同)

一、 西迫幸子(二通)、脇阪知江子(二通)、中北義男、高下一登、朴憲雄、西奥陽次、坂井二生、松田育雄、山本和登、文相根、田島洲、神宮和枝及び栗栖利明の検察官に対する各供述調書

一、 西迫幸子(二通)、脇阪知江子、中北義男(四通)、広瀬京子、朴憲雄、佐藤善勇、中島哲夫、田中琴代及び栗栖利明の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、 大蔵事務官中村真一(一一通、証拠等関係カード番号1ないし3、5、7、8、14、16、ないし18、20、なお1には売上調査表八冊、5には一般管理費調査表三冊各添付)、同山本守人(四通、同12(判示冒頭の事実を含む)、21、24、25)、同岩崎清吉郎(二通、同13、15)及び同坂藤要(一通、同19)各作成の調査事績報告書

一、 大蔵事務官川増南岳(一通、同28)及び同山本守人(三通、同29ないし31)各作成の現金有価証券等現在高検査てん末書

一、 信用組合広島商銀本店営業部長有田春夫作成の上申書(一通、同36)

一、 株式会社安田商事代表取締役安田次郎、レジン商事株式会社代表取締役村尾隆、広島日産モーター株式会社代表取締役前弘登、第一レジン株式会社代表取締役佐藤善男、信用組合広島商銀本店営業部長有田春夫及び株式会社呉相互銀行本店営業部長渡辺輝明各作成の証明書

一、 クラブ「露重」及び「女狐」代表者露重フナ子(二通)、前弘登、渡辺文具店代表者渡辺信昌、沖田ビル株式会社取締役社長沖田清伸、広島県税事務所長岡崎豪文、代表者山重徳男、広島忠燃株式会社代表取締役小林朝哉、株式会社本山ビル代表取締役本山栄荘、株式会社東伸代表者寒川和明、株式会社オリエントファイナンス取締役社長木谷義高、広島県海田県税事務所長光本生二(二通)、代表者永井シズエ、富士火災海上保険株式会社田中及び呉県税事務所長岡部勲(二通)各作成の回答書

一、 大蔵事務官山本守人作成の告発書の抄本

一、 押収してある52、53事業年度法人税決議書一綴(昭和五五押第一一二号の22)、給料支払明細書四八枚(同号の23)、約束手形控一册(同号の24)、売掛帳三綴(同号の25、27、28、同199、200、201)、売上帳一冊(同号の29、同202)、請求書(同号の30)、支払通知書(写)一枚(同号の38)、郵便振替受払通知票一綴(同号の39)、領収証一枚(同号の40)、割賦購入契約申込書一綴(同号の41)、納品書控(同号の42)、割賦購入契約申込書控一綴(同号の43)、郵便振替払込書一冊(同号の44)、コクヨ領収証用紙一冊(同号の45)及び購入契約申込書(現金売)一冊(同号の46)

一、 登記官作成の登記簿謄本(判示冒頭の事実を含む)

判示第一、第二の各事実につき

一、 大蔵事務官中村真一(一通、証拠等関係カード番号4)及び同山本通泰(一通、同27)各作成の調査事績報告書

一、 株式会社三共紙器印刷工業代表取締役大前喜三郎、株式会社肉のますゐ代表取締役舛井利雄及び株式会社読売連合広告社広島支社長滋野進各作成の回答書

一、 押収してある売上帳一綴(昭和五五年押第一一二号の1、同174)、個人別売掛台帳一冊(同号の2)、売上帳一冊(同号の3、同176)及びノート(給料)一冊(同号の17同190)

判示第二、第三の各事実につき

一、 紫田誠及び樫村文太の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、 大蔵事務官中村真一作成の調査事績報告書(証拠等関係カード番号23)

一、 山陽倉庫株式会社常務取締役西本利春、幸正不動産従業者川上初美及び被告会社福岡支社長中北義男各作成の上申書

一、 山陽倉庫株式会社取締役社長田村由夫、いずみ書房株式会社代表取締役 村文太、株式会社マツダオート福岡代表取締役中島国彦、広島地方貯金局長森川武一及び株式会社山口銀行広島支店長永田淳各作成の証明書

一、 ワタナベデンキ代表者渡部俊典、不二石油販売株式会社取締役社長西浜仙太郎、株式会社岡部マイカ工業所取締役社長岡部久米蔵、井口建設株式会社代表取締役寺山文治、大桑興産株式会社代表取締役桑野清高、株式会社中本本店代表取締役中本勝人、片山産業株式会社取締役社長片山敏夫、九州佐川急便株式会社代表取締役赤間等、株式会社西広取締役社長正本敬造、(株)総合安全広島東営業所、中国佐川急便株式会社代表取締役橋本克己、信光産業株式会社、安田火災海上保険株式会社広島支店長武内俊一(二通)、同支店総務課、中央プランニング株式会社、加藤昭子、廿日市県税事務所長及び宇吹時彦各作成の回答書

一、 押収してある売上張二冊(昭和五五年押第一一二号の4、5、同177、178)、個人別売上台帳二冊(同号の7、9、同180、182)、カウンセラー別売上帳一綴(同号の10)、現金出納帳一冊(同号の11)、金銭出納帳一冊 (同号の15 同188)、ノート(給料)一冊(同号の18、同191)、集金帳一冊(同号の31)及びいずみ書房支社契約書一綴(同号の37)

判示第一の事実につき

一、 株式会社平和代表取締役藤原三郎作成の証明書

一、 中本総合印刷株式会社取締役社長山本力大、呉社会保険事務所長地方事務官小野本勲、株式会社シーボン化粧品総合本部代表取締役大塚尚典及び日産プリンス広島販売株式会社代表取締役田中操各作成の回答書

一、 領収証控五綴(昭和五五年押第一一二号の32ないし35)

判示第二の事実につき

一、 吉沼良宣の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 大蔵事務官中村真一作成の調査事績報告書(証拠等関係カード番号6)

一、 東京商銀信用組合本店営業部理事・支店長趙鏞植外一名作成の証明書

一、 有限会社大下自動車工場代表取締役大下数人、小島紙器工業株式会社代表取締役田村雅弘、東洋出版株式会社代表取締役長宗像修、田中自動車工業株式会社代表取締役田中重治、田中自動車工業株式会社、下川畳材代表者下川益男、株式会社ヤマトマネキン代表取締役小泉恒雄、増成織ネーム株式会社代表取締役増成好太、教学印刷株式会社代表取締役田代雅隆、生駒商事株式会社福岡営業所長土屋明比古、株式会社福原商店代表取締役福原忠雄、中国電気工事株式会社取締役社長中野重美、昭和土地建物株式会社代表取締役渡部重政、岡山県貨物運送株式会社広島主管支店伊藤、シオダ装飾代表者塩田強、朝日衛材株式会社代表取締役村松保秀及び株式会社中国新聞広告社代表取締役社長山本朗作成の回答書

判示第三の事実につき

一、 元山博海こと郭柄海の検察官に対する供述調書

一、 佐伯照彦の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、 大蔵事務官中村真一(証拠等関係カード番号9ないし11、22)及び同山本通泰(同26)各作成の調査事績報告書

一、 信用組合広島商銀本店営業部渉外係元山博海作成の上申書

一、 株式会社フアイブ代表取締役佐野和美、株式会社オ、ロラ代表取締役真田伝之助及び株式会社広島銀行八丁堀支店長高橋貢各作成の証明書

一、 弁護士藤本亘、青木畳店代表者青木敏章、窪田自動車工業株式会社取締役社長窪田和三郎、多里石油有限会社代表取締役田中好幸、株式会社西広案内代表取締役、専務取締役北川武次、株式会社ショウ堂代取締役熊野真、大成石油株式会社代表取締役玉木一二、有限会社京橋運送取締役菊畠康早、株式会社新広島ホテル常務取締役小柳宏国、有限会社日 通商代表取締役佐々木卓治、メーゾンささき代表者佐々木力、有限会社武末製図社代表取締役武末勝夫、東京海上火災保険株式会社広島支店、富士ゼロックス株式会社中国支社長後藤健、株式会社アド東京代表者山本勝彦及び株式会社文華堂代表取締役伊藤顕各作成の回答書

一、 有限会社石松代表取締役西岡康雄作成の請求書

一、 押収してある売上帳一冊(昭和五五年押第一一二号の6、179)、個人別売上台帳一冊(同号の8、同181)、決算報告メモ綴一綴(同号の12)、金銭出納簿二冊(同号の13、14)、金銭出納帳一冊(同号の16、同189)、ノート(給料)二冊(同号の19、20、同192、193)、売上帳一冊(同号の21、同194)及び約束手形一枚(同号の26)

(法令の適用)

被告人朴憲正の判示第一ないし第三の各所為はいずれも法人税法一五九条、(七四条一項)に該当するところ、情状によりいずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認められる判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内内で同被告人を懲役一〇月および罰金四〇〇万円に処し、被告法人日本臓器株式会社については、その代表者である被告人朴憲正が同被告法人の業務に関して判示第一ないし第三の各違反行為をなしたものであるから同法人に対しては法人税法一六四条一項に従い同法一五九条所定の罰金刑をそれぞれ科し、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告法人を罰金二〇〇万円に処し、同法一八条により被告人朴憲正が右の罰金を完納することができないときは金一万五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、同被告人に対し、情状により、同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 山浦征雄)

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